コーポレートメッセージ、あまり聞きなれない言葉かもしれませんね。

商品やサービスではなく、企業の姿勢や大切にしていることを表したコピーのことです。企業ロゴの近くに置かれていたり、CMの最初や最後に出てくる、あれです。

このコーポレートメッセージ(コーポレートスローガンやコーポレートステートメントとも呼ばれます)を考えるのもコピーライターです。今日は、その代表的なものをご紹介しましょう。

 

秀逸なコーポレートメッセージ

コーポレートメッセージを紹介するときに、これは外せないと思う5本をピックアップしました。みなさんも、一度は聞いたことがあると思います。

 

① 資生堂 「一瞬も 一生も 美しく」

 

はじめて見たときは、衝撃的でした(たしか、元日の新聞広告だったと思います)。これほど端的に、企業の存在価値を表したメッセージを他に知りません。

資生堂という、伝統ある化粧品メーカーをたった9文字で言い切っています。余計な言葉は、一切ありません。でも、必要な言葉はすべて含まれている。そう、このメッセージ自体がとても美しいのです。

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コーポレートメッセージは消費者はもちろん、企業で働く人たちやその家族、株主や取引先、地域社会といったすべての利害関係者(ステークホルダー)に向けて発信しています。

わたしたちはこういう姿勢で仕事に取り組み、社会にこんな価値を提供していますと宣言しているわけです。

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いいコピーの条件に、「声に出してみたくなる」というのがあります。わたしはこれまで、何度もこのメッセージを声に出して嚙み締めました。その度に、完全無欠さに打ちひしがれます。

文字面が美しく、声に出してなお美しい。このメッセージを書いたのは、国井美果さんです。コピーライターの神様と称される、仲畑貴志さんも下記のように評しています。

鮮やかだなあ。企業とコピーの幸せな出会い。化粧品というテーマで、これ以上何を語ることができるのだろう。このクライアントは、このコピーを、長く永く使うことになるでしょう。(仲畑貴志)

出典:『日本のコピー ベスト500』宣伝会議

このメッセージが発表されたのが、2005年。本当に、100年後も使われているんじゃないかと思わせるほどの完成度の高さです。

使っているのは、ごく一般的な言葉なだけに、まったく色あせるイメージがありません。

 

② タワーレコード「NO MUSIC, NO LIFE.」

 

これも、みなさんご存知ですね。もっとも多くの人に目に触れた、そしてもっとも多くパロディされた、コーポレートメッセージと言ってもいいでしょう。

訳すなら、「音楽のない人生なんて(あり得ない)」といったところでしょうか。コピーライターは、木村透さんです。

 

わたしは音楽事情に疎いほうで、普段もあまり音楽を聴きません。ですが、このコピーが多くの人の心をつかむことはわかります。

というか、もはや「タワレコ=NO MUSIC, NO LIFE.」というぐらい、代名詞のような存在になっていますね。

さりげなく、当たり前のようにそこにいる。とても、普遍性と共感性の高いメッセージです。ちなみにタワーレコードでは、「NO MUSIC, NO LIFE.」を“コーポレートボイス”と位置付けています。

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③ キユーピー「愛は食卓にある。」

 

味わい深いですね。おこがましさを承知で言うなら、視点と切り口が絶妙です。

「愛とは何か?それは、どこにあるのか?」といった、人間の普遍的な問いに答えているからでしょうか。ちょっと、逆立ちしても書けないと思うほどの、軽やかさと強さを兼ね備えています。

 

厳密にいえば、愛は食卓だけにあるわけじゃありません(笑)。街にも、家にも、心の中にもあるでしょう。

でも“キユーピー”という、マヨネーズを中心とした普段使いの食品メーカーがこのメッセージを発信すると、何とも言えない説得力が生まれるから不思議です。

母が毎日のように作ってくれたご飯やお弁当に、思いを馳せるからでしょうか…

「愛は食卓にある。」このコーポレートメッセージを書いたのは、コピーライター界の巨匠と呼ばれる秋山晶さんです。

 

④ ミツカン「やがて、いのちに変わるもの。」

 

一編の詩のように、美しいです。いのちの源を作っているんだという、食品メーカーとしての誇りを感じさせます。

このメッセージは、コピーライターの岩崎俊一さんが書かれました。上記のボディコピーを読んでも、いかに深い考えや思いに根差したメッセージであるかがわかると思います。

岩崎さんの著書『幸福を見つめるコピー』を読んだとき、「こんな温かい眼差しを持った方だから、あのメッセージが書けるんだな」と納得しました。

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⑤ Apple 「Think different.」

 

もう説明不要ですね。全世界でもっとも知られた、コーポレートメッセージでしょう。誰が書いたかを調べたところ、アートディレクターのクレイグ・タニモトさんとのことでした。

わたしは、このメッセージの和訳でしっくりくるものに出会ったことがありません。

それがまたいいじゃないですか。「Think different.」は「Think different.」。Appleと同じく、唯一無二なんだと思わせてくれます。

 

この言葉のニュアンスを深く味わいたい方は、ぜひ下記のCMを観てみてください。きっと、勇気をもらえますよ。ナレーションは、スティーブ・ジョブズです。

 

まとめ

いかがでしたか?今日は少し趣向を変えて、有名なコーポレートメッセージを紹介しました。

他にも、コスモ石油「ココロも満タンに」、サントリー「水と生きる」、NIKE「JUST DO IT.」など、たくさんの傑作があります。ネットで検索して、あなたのお気に入りを見つけるのもいいですね。

そして、コピーライターになって、ぜひ何十年と残るコーポレートメッセージを書いてください。

 

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