今年もあと少し。このサイトをリリースしたのが1月ですから、もうすぐ1年が経ちます(おかげさまで、少しずつコメントをいただけるようになりました。ほんと、感謝です)。

この1年、たくさんの広告を見ました。印象に残った仕事はいくつかありましたが、“コピー”という視点で見たとき、やはりゼクシィのCMはあたま一つ抜けています。

今日はそんなゼクシィのコピーについて、改めて見てみましょう。

 

ここが素晴らしかった、ゼクシィのコピー

「どんなコピーだか、知らないよ」という方のために、うちのツイートの引用です。

 

ありがたいことに、ちょこっとシェアされました。多くの方が「今年一番」と感じたんだと思います。月刊ブレーン広告グランプリの受賞も納得です。

結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです。

ツイートにもある通り、わたしはこのコピーを何度も声に出して読みました。

いいコピーの条件に、「声に出して言いたくなる」ことが挙げられますが、このコピーの良さはそれだけではありません。挙げてみると…

 

① メッセージとして自立している

そうですね。単体のメッセージとして自立しています。ビジュアルとの連動がなくても、十分コピーとして機能します。

基本的には、ビジュアルとコピーのセットで最大限に効果を発揮するのが広告です。なので、必ずしもコピー単体で機能する必要はありません。

ですが、単体で機能するということは、やはりそれだけコピーに力があるということです。その証拠に、グランプリのアンケートでも「コピーに強く共感した」という声が多かったそうです。

 

② 長いだけの理由がちゃんとある

わたしは、基本的に「コピーは短いほどいい」と考えています。口にしやすい、覚えてもらいやすい、伝わるスピードが速い、強さが増すなどがその理由です。

しかし、それには「言いたいことをちゃんと言えているなら」という前提条件があります。短くすることで、何を言いたいかがわからなくなっては本末転倒ということです。

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改めて、ゼクシィのコピーを見てみると35文字。そこそこ長いですよね。

でも、このメッセージを届かせるには、この文字数が必要です。無理に短くしようとしても、ニュアンスが変わってしまうでしょう。

必要なことは十分に言えていて、余計なものは何も付いていない。これがいいコピーなんです。

しかも、やさしい文章かつセリフ(これも大きな要因ですね)なので、スッと頭に入ってきます。長さを感じることはありません。

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③ 売り込む感がほぼ感じられない 

広告臭さが嫌われる時代ですが、ゼクシィのコピーには、ほぼそれが感じられません。

“結婚”そのものを語っているので、当たり前といえば当たり前です。しかし、ここで一つ疑問がわきます。そう、果たしてそれでゼクシィの広告宣伝として成立するんでしょうか?

 

これがするんですね。一つには、ゼクシィのブランディングの効果。もう一つ見落としがちなのが、ゼクシィはブライダル情報市場において圧倒的なシェアを占めているという点です。

つまり、このCMを観て「結婚っていいな」となり(さすがにそう単純ではないでしょうが)、たくさんの方が結婚すれば、その分だけゼクシィの売り上げアップにつながるわけです。

 

それらを踏まえて、CMをもう一度

そんな能書き(笑)を踏まえて、改めてCMを観てみましょう。

 

いいですね。ちょっと泣きそうになるくらい、完成度の高いCMです。この映像の主役は花嫁でも花婿でもなく、間違いなくコピーです。

改めて観てみると、「~したいのです」が効いています。「~したい」でも意味としては同じですが、そこに花嫁の切なる願いが込められています。

 

価値観も多様化して、人によっては結婚が必ずしも幸せな選択とは限らない。

それでもこの人と結婚したい、ずっと一緒に生きていく道を選びたい。そんな儚い祈りにも似た決意が、多くの人の心をつかんだのかもしれません。

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(2018年8月、追記)

書いたコピーライターは、博報堂の坂本美慧さんです。このコピーでTCC(東京コピーライターズクラブ)の新人賞を受賞されました。今後の活躍に注目ですね。

「いまは統合的にコミュニケーションを見ることが求められる傾向にありますが、まず言葉の精度を高めていくことを今後のテーマにしています。」とのこと、下記の記事で受賞コメントが読めます。

 参考  ブレーン|TCC 新人賞2018 受賞作品発表

 

まとめ

2017年のベストCM、ゼクシィのコピーが秀逸だった3つの理由。それらを踏まえて改めてCMを観ていただきました。

「広告することは、応援すること。」とは、クリエイティブディレクター箭内道彦さんの言葉です。ゼクシィのCMは、まさにゼクシィと人間にエールを送る印象的な広告でした。

さて、2018年はどんなコピーがわたしたちを応援してくれるでしょう。わたしたちは、どんなコピーで世の中を応援できるでしょうか。みなさん、どうぞ良いお年を。

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