ふと、新人時代の仕事を思い出すことがあります。誰しもそうかもしれませんが、少なからず恥ずかしいもんです。「お前、よくそれでやっていけたな」と。
あれは、たしかまだアシスタントだったとき。先輩ディレクター(以下、先輩D)から声がかかりました。「ネーミングの仕事、お願いできない?」
わたしがコピーライター志望だというのを聞いて、声をかけてくれたんでしょう。わたしは「やります!」と即答したと思います。
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案件は「いろんな色に着せ替えられる、車のヘッドライト(フィルムか何か)」でした。クルマをあれこれいじりたい人が使うやつですね。
わたしはネットで少し調べて、「ふーん。まぁ、そういうことしたい人もいるだろうな(わたしはしないけど)」くらいに思って、すぐにコピーを書き出しました。
わりと急ぎの案件で、たしか「翌日には一度見せて」くらいのスケジュールだったと思います。そこで、わたしが提出したのが以下の案
- カラフルレンズ
- レインボーライト
- パレットレンズ
- パステルライト
- カクテルレンズ
ひどいですね。通行人にインタビューしたって、同じようなのが出てきます。最後の「カクテル~」にいたっては、自動車関連の案件でアルコールはないでしょう…
先輩D「これが、いいと思うネーミングなんだ。そっかそっか」
わたし「はい…(時間があれば)もうちょっと出せるかもしれませんが」
先輩D「OK、わかった。ありがとう」
だいたいそんなやり取りだったと思います。先輩Dから声がかかることは、二度とありませんでした。他の人に頼んだか、もう自分で考えようと思ったのかもしれません。
全力であの頃に戻って、思いっきり自分の頭をはたいてやりたいです。
なぜ、オートバックスでもどこでも、購入される現場に行かないんでしょう?なぜ、スマホケースとか(当時はないですが)、同じような構造の他商品の事例を調べないんでしょう?
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いくら時間がないにしても、ひどすぎます。現場にも行かずに、他事例も競合商品も調べずに、「自分の勘だけで書く」という、最悪のアプローチです。
百歩譲って、車のカスタマイズに詳しくて、同じような商品を使ったことがあるならまだしも(それでも、絶対に情報収集は必要ですが)、まったく縁も興味もなかった世界です。
きっと、お金を出してその商品を買う人の気持ちなんて、想像もしなかったんでしょう。いま思い出しても、クラクラしてきました。では、また明日です。